決まったら考えるよ。

思いついたことそのまま書く。髭剃り、読書、仕事、考えたこと、調べたことを備忘録代わりに。

アメフトと、交渉と、思い上がりと。

最近世間を騒がせているこの問題。

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僕自身の考え方などこのニュースの当事者に対して何の影響も与えることが出来ないし、当事者たちとて起こってしまったことなどどうにか解決、処理するしかない。完全な部外者である僕らが考えるべきは、これをどう他山の石とすべきか、だとは思う。そう考えていると、僕の近くで起こった過去ある事件と重なる部分に気付いた。

この事件の概要

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 アメリカンフットボール日本大学関西学院大学の定期戦で日大の選手が関学大の選手に危険なタックルをして負傷をさせた、というもの。今の話題の争点としては、「指示があったのか、なかったのか」というところになるんでしょうね。さらっと記者会見も見ましたが、20歳そこそこの学生と60歳を超えた監督の会見の内容にも食い違いがあり、また、編集の手法やそれを見た個人の受け取り方でだいぶ違うとは思いますが、「『やれ』という指示があった」というように僕が感じたので、そういう前提でこれ以降の記事は書かれています。

社内で起こった事件の概要

それは新規商品開発チームで起こった。

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 とある新商品開発チームで起こった事件。そのチームは全く新しい商品を!というコンセプトから手配された商品開発チームで、その発想を束縛するものは「経営理念から定義される事業領域」ということだけ。当時各支店の統括を行っていた温和な人柄のS支社長をリーダーとして社内の各部署から選りすぐり5名が集められ、コンセプトの決定、販売ターゲットや利用広告媒体の絞り込み、そしてオリジナルの開発まではほんの半年ほどで行き着いた。誰もがこれから広がる素晴らしい新規商品の販売に胸を躍らせていた。本当に素晴らしい成果だったと思う。しかし、ある日を境に温和なSさんが出社しなくなった。人事室宛に送られてきた診断書にはこうかいてあった。「うつ病」と。

診断結果は、うつ病

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 チームは揺れた。今までやってこれたのは温和なSさんのバックアップ、包容力に何度も救われていたから。不在のままでこの開発は進められるのか?本当に産めるのか?そしてこれから、商品開発チームは最も難しい採算性検討フェーズを迎える。このフェーズの鍵となる部材単価交渉はSさんが一手に引き受けていたので、そのことも余計にチームメンバーの不安を加速させた。しかしそのことを嘆いていても何も進まない。採算性検討フェーズでメインメンバーとして活動していたHさんは、部材単価交渉を引き継ぎ、なんとしても進めようとした。

何故か激怒している取引先

 Hさんはまず、部材単価交渉相手のD工場長に連絡をした。D工場長とHさんは何度か顔を合わせたこともあり、この商品開発のことで直接話をしたこともある。だからHさんは「担当者変更という形で挨拶とお詫びをして、とりあえず状況の確認からだな…。」という程度の温度感だったが、現実は違った。

「おたくの会社は何を考えているんだ!」

「コロコロと担当者を変えた挙句、納品単価までコロコロと変えやがって!」

「会長から言われたから付き合っていたが、もう付き合いをやめるぞ!!」

Hさんは初回の電話からいきなり罵倒され、面食らった。一体なぜここまでD工場長は怒っているのだろうか。Sさんの話を聞く限りはそこまで無茶な交渉もしていないし、関係性も悪くないと聞いていた。しかもHさんが算出した納品希望単価は一度も変更を加えていない。原価率を勘案してもWin-Winの関係性で終えることが十分に出来うるレベルのものだ。何かがおかしい。D工場長もひとしきり罵倒した後は落ち着いたものの、全ての事情を聴くことは出来なかった。Hさんは「また改めて、ご連絡をさせて頂きます。」そう言うのが精いっぱいだった。

発覚した経緯

 Hさんは上司に報告し、社内の情報収集を開始した。なぜD工場長は激怒していたのか。担当者は一度も変わっていないはずなのに、単価も一度も変わっていないはずなのに、なぜあのようなことを言ったのか。そこで明らかになったのはSさん上司からの「交渉」という名の条件押し付けだった。Hさんが算出した納品希望単価は、あくまでも取引先と5:5のWin-Winとなる数値。そこで落ち着ける為には、まずは6:4か7:3くらいの利益比率で先方に投げかけ、「先方に対して譲歩した」というポージングをして5:5にもっていくのが一番だ。だからSさんはセオリー通り、6:4の利益比率で先方と交渉を開始した。しかしD工場長には「会長から言われた…」という案件であるバックグラウンドもあり、多少は厳しい話になるが利益もしっかり出る、ということで6:4の条件を飲んだ。Sさんは喜び、この状況を当時の上司に報告した。しかし、その上司からさらに出された条件はとんでもないものだった。

「交渉」という名の押し付け

「初球で条件を飲んだということは、まだ向こうに余裕があるということだ。」

「9:1で話を付けてこい。だから初回は10:0で話をしてこい。」

Win-Winに何の意味もない、自社の為に話を付けてこい。それが交渉だ。」

Sさんは戸惑った。先方と無事に話が付いた、という報告だったのにも関わらずなぜまだ蒸し返すようなことをするのか。利益の最大化と言われればそれまでだが、その利益は誰かと誰かの協力関係の元に成り立つものであり、搾取の上に成り立たせてはならない。しかしこのチームが商品を生み出し、腐心してくれているメンバーに報いる為には会社の言うことも理解できる、どうすれば良いのか。悩んだSさんが出した結論は言われた通りに10:0で話をすることだった。激怒する工場長、うまく話をまとめられなかったことをなじるSさんの上司。一番重要なフェーズが暗礁に乗り上げることになり、チームメンバーに対する申し訳なさ。そして思い悩んだSさんは戦線を離脱し、D工場長の激怒へと繋がることになる。


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そもそも交渉とは

ここで本題の共通点に戻る。

日本語の国語辞典では「1. 特定の問題について相手と話し合うこと。」「2. 交際や接触によって生じる関係。かかわり合い。関係。」などと説明されるが、英語の辞典では「合意に到達することを目指して討議すること」などと説明されており、ここではそれに準じて解説する。


交渉とは、利害関係が生じている中で、合意点を得るために行われる対話、議論、取引である。その目標は双方が受け入れることができる諸条件を導き出し、それに合意することである。

交渉 - Wikipedia

Wikipediaにもあるように、交渉とは相手と自分の合意点を探る為に行われる「対話」であり、「押し付け」ではない。SさんとD工場長の間では一発目で合意点に到達してしまってはいるが、結果的には合意点に着地している訳である。しかしSさん上司は気に食わない。そりゃあハイボールテクニックを起点として考えれば初回の合意なんて向こうにとって余裕だった、こちらの手抜かりだ、とジャッジするしかないから。でもだからといって10:0で投げてこいというのはハイボールテクニックではない。内諾とはいえ合意した後なんだから、ビーンボールテクニックだ。そんなものは「交渉」という名のただのこちらの希望の押し付けでしかない。今回のアメフト事件と上司による指示が、僕の中で重なった。

そして思うこと

上司と部下という関係は評価を通じて給与、生活に直結し、そしてまた断れば職場という生活の環境も悪化することになる。だからこそこういった事件、「やってこいと言われたからやりました。」というものは今の会社にこそ溢れているのではないだろうか。交渉という名の押し付けタックルはきっと全国にもこれでもか!ってほどあると思う。それは交渉じゃない、ただの希望だ。だったら貴様がそれ言ってこい。

そんな風に言える日がくるといいな、となんとなく思いました。

※実際に起こったことを基準に書いておりますが、フェイクが盛り込んであります。

ハーバード流交渉術 (知的生きかた文庫)

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